駐在員との乗り合い通勤はこんなに面倒くさい

駐在員との乗り合い通勤はこんなに面倒くさい

当サイトにおいても、タイ現地採用における通勤手段の問題についてかつて触れたことがある。

 

通勤手段は要チェック項目

 

筆者の基本的なスタンスは、面接時に「駐在員との乗り合い通勤」というのが分かっているのであれば、その時点でその会社に就職することは避けるということだ。理由としては、乗り合い通勤によって、社畜度がアップしたり、行動の自由が制限されることなどがあげられる。

 

しかしながら、そんな筆者でも「駐在員との乗り合い通勤」を甘んじて受け入れねばならないときが来てしまった。

 

貧すれば窮するというか、タイでの転職活動が芳しくなく、徹底的に妥協に妥協を重ねた結果、自らのポリシーを曲げて、駐在員との乗り合い通勤の会社を選んでしまったのである。

 

ただ、実際に経験したことでこうやってサイトの記事にすることもできる。この記事がこれからタイ現地採用に挑むとき、あるいはタイで転職するときの参考になればとても嬉しい。

 

乗り合い通勤によって現地採用が我慢しなければならない要因はいくつかある。それぞれについて筆者の経験と考えをこれから述べていく。

 

乗り合い通勤によって住む場所も限定される

 

筆者が勤務したのはサムットプラカーンにある工場であった。

 

タイの事情をよくご存じの方なら想像がつくかもしれないが、サムットプラカーンというのはお世辞にも住み心地の良いエリアとは言えない。工場だらけであるし、空気も汚い。エリアによっては治安の悪い場所もあると聞く。おまけに道路はひどく渋滞する。

 

そのため、「工場の近くに住んで、バイクや車を買って自力で通勤する」という選択肢は最初から除外された。

 

内定をもらった工場からお願いされたのは、「スクンビット沿いの街に駐在員と現地採用が固まって住んで、そこから工場に乗り合いで通勤する。駐在員が住んでいるコンドミニアムの近くに引っ越してください」ということであった。

 

朝は駐在員が住んでいるコンドミニアムまで歩いて行き、そこで社有車に乗り込む。帰りも駐在員の住むコンドミニアムまで送ってもらう。

 

駐在員が住むコンドミニアムと現地採用の私が住むアパートメントは、車で移動してもせいぜい5~10分程度の時間しかかからなかった。

 

それでも、どういうわけかその会社では、現地採用の住居までは朝夕の送迎はしないという方針のようであった。

 

たいした距離じゃないのだから、アパートの前まで送り迎えをしてくれても構わないだろうと思ったものだ。

 

仕事が終わった後に帰るときも駐在員の都合が最優先である

 

社有車が二台しか無くて、日本人の数も多い会社だったので、いつでも自由に車を使える状態でもなかった。仕事が終わって定時になったら、帰れるかどうかも駐在員にお伺いを立てなければならない。

 

車の手配をするのはタイ人総務であったが、その総務がお伺いを立てる順番も駐在員が最優先であった。

 

現地採用の筆者は駐在員の帰る支度が整ってから、やっと帰れるというわけである。仕事が終わっていくら暇をしていようが、駐在員が帰らなければ帰れないのである。

 

定時後に、駐在員と一緒に帰ろうとしたところ、駐在員からこんなことを言われることがよくあった。

 

「あれ、もう帰るの? 仕事残ってないの? 残業したいんだったら、残ってもう一台の車で帰ったら?」
「いやあ、ハハハ。帰りますよ」

 

帰り際になるとこんなイジリがよくあったので、駐在員のその言葉を半分、冗談だとは受け取りつつ、「うるせーな、面白くねえんだよ、この馬鹿野郎!」と内心毒づいていた。

 

社内の座席まで細かく序列が決まっていた

 

日本のビジネス社会というものは序列にはとくに厳しいものだ。車に乗るときも、上座と下座がある。お客さんを案内するときはまだ分かるが、その会社では通勤時の移動時でも厳格に座る位置が決められていた。

 

くだらない権威主義で凝り固まった日系企業である。

 

英語もロクに話せない、なおかつ、低学歴な駐在員が日本から送り込まれてくる会社であった。そういう体育会系的な権威主義を振りかざさない限り、企業統治が出来ないとでも思ったのかもしれない。

 

朝は早起きが強いられる

 

バンコクからサムットプラカーンの工場への通勤となると、朝はどうしても混雑してしまう。交差点の信号待ちで、20分以上待たされることは度々ある。

 

始業時間が8時30分であっても、バンコクを6時50分には出発していた。

 

となると、朝の5時か5時30分には起床しなければならなかった。早起きは得意な方ではないので、これが嫌で嫌でたまらなかった。

 

通勤時間は往復2時間30分~3時間

 

通勤時間の長さも気になる点である。朝も夕方も渋滞するので、往復で2時間30分~3時間くらいはかかってしまう。

 

自分で車を運転して通勤なら社内で好きな音楽でも聴いたり、語学の勉強でも出来るだろうが、駐在員との乗り合い通勤になればそういうわけにもいかない。

 

通勤時間で往復で最大3時間かかるとなると、何のために通勤地獄の日本を離れてタイにまでやってきたのか分からなくなってしまう。

 

住む場所がスクンビットに限定されたのは飲み会対応のためか

 

つらつらと乗り合い通勤の面倒くささについて述べてきたのであるが、今から振り返ると、その会社の意向としては現地採用の筆者に対して、工場の近くにアパートを借りて生活することを望んではいなかったのではないかと推測している。

 

というのは、筆者は営業をやっていたのだけれど、営業の場合とくに、お客さんとの会食やら、社内での飲みといったものに参加せざるを得ないことが多かったからである。

 

「ちょっと飲みに行こうか!」と駐在員の上司に誘われたときに、サムットプラカーンの工場の近くに住んでいたら、駐在員の多く住むスクンビット通り沿いの飲食店にまで行くのも大変だ。

 

バイクや車で自走して移動しても良いが、アルコールを飲むとなると帰りは飲酒運転になってしまうだろう。最近のタイは飲酒運転の取り締まりにも厳しいから気を付けたいところだ。

 

そういうこともあって、会社としては現地採用の営業にはスクンビット通りに住んでもらうのがベストというわけである。

 

(といっても、お客さんの駐在員にしても、現地採用とは酒を飲みたくないだろうなと想像する。企業間で飲食をする場合、お互いに社内での意思決定権が多少なりともあるから、飲食に応じるわけである。何の権限も無い(もしくは権限が限定された)現地採用と酒を飲んでも後々に自分にとってメリットが無いと考える駐在員は多いはずである。)

 

面接でもある程度はチェックできるだろう

 

以上のように、駐在員との乗り合い通勤は本当に面倒くさいものである。出来ることなら乗り合い通勤は避けねばならないと強く思う。

 

しかし、どうしても乗り合い通勤の企業を選ばねばならないような状況もあるだろう。また、面接や求人票でも乗り合い通勤のその内容を大体はチェックできるはず。

 

たとえば、以下のようなポイントだ。

 

会社には日本人が何人いて、何台の社有車を使用して通勤しているか
乗り合い通勤だったとしても、自宅の前まで会社の車が迎えに来てくれるかどうか

 

(転職活動のときに、人材紹介会社から送られてきた求人票を眺めていたら、「試用期間中は集合場所に毎朝来てもらって乗り合い通勤をしてもらうが、試用期間後は社有車貸与で自分で運転して通勤してよい」という内容の求人があった。けち臭い会社だ。社有車貸与なら最初から貸与すればいいものをと思う。)

 

ある程度、規模が大きい会社なら、資金的な余裕もあって、現地採用の待遇も悪くないことが多い。その一方でタイに進出して来ている中小企業には人数分の社有車が用意されているとは限らず、社有車があったとしても駐在員が優先される。