人材紹介会社へ伝える「前職を辞めた理由」は本音を言ってはいけない
タイでの転職において必ず聞かれるのが「前職を辞めた理由」である。
なぜ前の職場を辞めたのか? 人間関係が良く無かった、給料が安かった、キャリアチェンジしたかったからとか。理由は様々だろう。
いずれにしても、応募する企業の面接官に、「ああ、その理由だったら前職を辞めるのも仕方が無いよね」と思ってもらえるだけの筋の通った理由を用意しておかねばならない。
気をつけなければならないのは、人材紹介会社を通して仕事を探す場合である。
ついついエージェントと仲良くなると「本音」を話したくなるものである。誰かに勤めていた職場での苦しみの体験を共有してもらいたいという気持ちが湧いて来るのだろう。だが、ここでクッと堪えなければならない。
筆者の場合は本音を伝えてしまって、後で失敗だったなと思ったことがあった。
エージェントに前職の退職の理由として、
「自分はマネージャーとして働いていたが、タイ人が言う事を聞いてくれず、タイ人との人間関係が原因で辞めた」
ということを伝えたのだ。
後で知ったのだが、エージェントでヒアリングされた求職者の情報というのは、エントリーする企業に求職者のプロファイルとして送信されてしまうらしい。
自分としては、「タイ人が言う事を聞いてくれない」というのも立派な退職理由の一つだと思っていたが、企業社会というものは本音と建前で成り立っているものだ。時にはもっともらしい理由を述べて、面接という苦境を乗り越えねばならないこともある。
筆者の失敗例
ここで、私が本音を述べて見事内定を取れなかった失敗例をあげることにする。
以下は、とある専門商社の面接でのやり取りである。
(面)「直近までお勤めされていた会社ですか、、、タイ人が言う事聞かないっておっしゃってましたけど、ウチでも言う事聞かないですよ。程度の差こそあれ、同じじゃないですかね?。どういう状況で言う事を聞かなかったのか。
言う事聞くもんだっていう前提で僕らは物事を考えてないよね。聞かない人たちをどうやってやるかっていう風に今やっているんですけど。聞かない、言う事聞いてくれない、マネージメント出来ない、だから辞めましたって仰ってましたけど、具体的にどんなことがあったんですかね?
(私)部下のタイ人も最低限の仕事はしていました。でも、プラスアルファで何か新しいことをやるということは特に抵抗がありまして。その一方で日本本社や駐在員の方々の方針としては、タイ人にもっと仕事をさせたいという考えがありました。タイ人と駐在員の狭間にありまして、かなり悩んでしまったのです。中間管理職的な立場に置かれたといいますか、、、。
(面)ウチもそんなもんすよ。それでやっぱりちょっと厳しいっていうことで辞められるっていうことだと中々難しいですよ。まあ、タイ人が言う事を聞かないっていう前提に立った上で、じゃあどうやってやるか?っていう風に考えて行かないと、ウチにもタイ人の中には20年選手とかいっぱいいますから。
もしウチの会社に来たとしても同じような状況になりますけど、それはそれで大丈夫なんですかね?
多分、最初はタイ人達は言う事を聞かないですよ。
まあ、その前の会社の退職の理由が、僕は凄く気になっちゃうんですよ。
極端な話、「景気が悪いです」と、「どんどんリストラしてます」とか、「サラリーが低いです」と言ってもらった方が、こちらとしては考えやすい。タイ人は日本人の言う事は聞かないんですよ。それで、「もういい!辞めてやる!」となっちゃうと困るんですよ。
やっぱり、現地採用の日本人というのは通常より高い処遇を提供しているという部分もありますから。
せっかく採用したのにすぐに辞めてもらったら、周りのタイ人だって、「なんだまたか!」と言う風に思うでしょう。そういう感じには思われたく無いんですよ。
その辺はどういう風にお考えなのかな、と思って。ウチに来たら、また前職と同じような状況が起こるでしょう。
多分、どこの会社でもあると思うんですよね。そのときにどういう風にやるのかな?っていう。具体的な行動をですね、ちょっと教えていただければなと思います。」
この後、私はその質問にうまく答えることが出来なかった。そして見事、不採用通知をもらうことになった。
人材紹介会社への登録もビジネスだと心得る
社会人が長い人であれば当たり前のことだとは思うが、会社という場所は友人が集まって出来ている組織ではない。皆、仕事をするためにそこに集まるのだし、そういう場所で常に本音をぶつけていいというわけでもない。
そうであるから、本稿について言えば、「人材紹介会社への登録の段階から、もうすでに真剣勝負の就職活動は始まっている」ということを考えておくべきだろう。
エージェントに会った瞬間に、面接は開始されているのだ。
ごくまれに本音を理解してくれる企業もある
とはいえ、私がここで述べた本音の退職理由、すなわち「タイ人が言う事を聞いてくれないから辞めた」ことについて、理解を示してくれる企業もあった。
世の中捨てたもんじゃないなと思ったものだ。タイというアウェイの地にいて、おまけに現地採用の身だ。タイ人からは日本人の現地採用は軽く見られるし、彼らを上手にマネージメントをするのはとても難しい。
そういう現実をよく分かっていて、現地採用の側に立ってくれる駐在員もいる。その面接のときは心が救われたものだった。
どうせ働くなら本音を言える会社で働きたいというのが筆者の思いである。
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