客先で出されたお茶にすぐに手をつけてはならぬ

客先で出されたお茶にすぐに手をつけてはならぬ

タイで働いているといかにも日本的なビジネスマナーだなと思うことがある。それは、「客先で出されたお茶にすぐに手をつけてはならない」というマナーである。

 

日本人営業として日系企業に訪問した場合には、知らなくて恥をかくということもあるだろうから、このページではこのお茶に関するビジネスマナーの最適解と、筆者自身の考えをまとめて提示する。

 

客先で出されたお茶はお客さんにすすめられてから手をつける

 

これが一番正しいと思われる。

 

すなわち、客先にてお茶を出されて、すごく喉が渇いていたとしても、お客さんに断らずにいきなり口をつけてはならないのだ。

 

まずはお客さんとの雑談をさらりと行なって、軽妙なトークでなごんでから、おそらく、お客さんの方から、

 

「あっ、お茶、どうぞお召し上がりください(お飲みになってください)」

 

などと言ってくれるのを待つのが日本的な常識とされる。

 

「どうも、すみません。では、いただきます」

 

などと、すみませんという謝罪の言葉も入れて、おもむろにお茶に手をつければより日本的になる。

 

お客さんがお茶をすすめてくれないときはこちらから断りをいれる

 

お客さんによっては、いつまで経ってもお茶をすすめてくれないときもあろう。

 

そういうときは、遠慮していてもよくない。とはいえ、無言でお茶を飲むのは日本的なタブーである。だったら、どうするか?

 

「お茶、いただきますね!」

 

こうやって一言断りを入れてからお茶を飲めばよい。お客さんによっては、、、

 

「すみませんね。気付かなくて」

 

などと、言ってくる人もいる。

 

タイローカル企業にはこんなビジネスマナーは存在しない

 

客先で出されたお茶への扱いをどうしたらいいのかというのは、あくまで日本にしかあてはまらないビジネスマナーだと思う。

 

というのも、タイローカル企業を訪問した際には、お茶のことについてあれこれと思案する必要は無いなと感じるからである。

 

タイローカル企業でお茶を出されたら、遠慮なくお茶を飲めばよい。喉が渇いていたらすぐにお茶に手をつけても構わない。

 

ごはんを食べるときに、「いただきます!」などと言葉を発する文化がタイに無い。飲み物についても同じことが言える。

 

一度筆者は実験として、タイローカル企業でお茶を出されたときに、「これからお茶をいただきます」という断りを入れてみたが、お客さんであるタイ人担当者は不思議な顔をしていた。もちろん、飲むなとも言わなかったが、わざわざ断りを入れるほどのことではないということがよくわかった。

 

日本人だけが海外に行っても、日本人同士で訳の分からないビジネスマナーに固執しているということなのだろう。

 

どこを訪問してもまずいインスタントコーヒーが出される

 

ここからは完全に余談なのだが、タイで営業をしていて、どこの訪問先でもまずいインスタントコーヒーが出されるということに言及しておきたい。

 

(コーヒーが冷めてから添付のクリームを入れると、コーヒーが「玉」になってしまうから気を付けたいところだ。)

 

なぜ、お客さんに提供するためのコーヒーについて、どの企業もこだわらないのだろうか。

 

少し気の利いた企業になると、「コーヒーにしますか、お茶にしますか」と聞いてくる企業もある。

 

ごく稀にだが、アイスコーヒーを頼むことが出来て、外部の喫茶店から飲み物を調達してきてくれるような企業もある。バンコク都心部のオフィスビルに入居しているような企業だとそういうところもある。だが、そういう気の利いた振る舞いが出来る企業は本当に稀である。

 

たいていの企業は客用のコーヒーやお茶に対して格別の関心も抱いておらず、「客が来たらとりあえずお茶を出しておけばいい」ぐらいにしか捉えていないのではないか。

 

中身よりも形式を重んずる日本文化に通じる問題のような気がして、タイにいて働いていても、「あーあ」とがっかりする瞬間なのである。