タイ現地採用のキャリアプラン〜一つの例として
これを読んでいる皆さんはタイ現地採用としてタイで働いて行くにあたって、キャリアプランをどのように考えているだろうか。
キャリアプランについての考え方は各人各様なので、最終的には自分で考えねばならないことである。ここでは、タイ現地採用のキャリアプランを考えるときのひとつの叩き台として、考え方のフレームワークを提示することにする。
タイ語を学びながら、最初は日系企業に勤務しつつ、将来はタイローカル企業への転職を目指す
これが一番、実現できたら面白そうなキャリアプランである。また、タイ語が出来て、タイローカル企業に入れれば、日本的な労働慣行、社内の同僚・上司・部下は全員ゴルフ友達みたいな企業文化を強制されるみたいなことはなくなるだろう。
日本の会社での労働が嫌で、タイに逃げてきたというような人も多いのではないか。それなのに、タイに来ても入れる企業といえば日系企業しかなく、仕方なく日系企業の面倒くさい文化に我慢しながら働いている人もいるはず。
タイ語さえ出来れば、日系企業とはオサラバ出来るし、自己の裁量が許される職場で、のびのび働くことが出来るぞ!などと、ついつい空想してしまうものだ。
確かに、今書いたような働き方を実現している人もいる。筆者の知り合いは、とあるタイローカル企業で、日系企業担当窓口として働いている。原料メーカー勤務である。
彼の場合、勤務している会社から出社を強制されることは無い。営業マンとして働いているが、営業成績がすべてであって、それ以外のことは一切文句を言われることは無いということだ。
くだらない朝礼に参加する義務も無ければ、日本人が大好きな接待ゴルフへの強制も無いのだ。上級レベルのタイ語力があって、タイ現地採用で成功しているケースだろう。
ただし、こういうケースでも注意しなければならない問題があるらしい。そのタイローカルで働いている知人に言わせると、
「タイローカルで働くときには、社長に気に入られるかどうかが大切」
ということだ。外資系企業というのも案外、ウェットなのだと考えさせられた。
また、タイ語がどの程度出来るかというのも重要である。知人によれば、
「タイ人の喋っていることが100%理解出来なければ駄目。そうでなければ、タイ人から潰される」
という話であった。「タイ人から潰される」というのはあまりにもキナ臭い話だが、案外その通りで、会社というのはウマが合う人なら問題ない、しかし、自分と合わない人、自分のことを敵対視してくる人というのはいるものである。
そういうときに、タイ人とタイ語でやり合うだけのタイ語力があるかどうか。そのタイ語力が無ければ、日系企業を選んだ方が無難であるということだ。
日系企業なら多少タイ語が出来なくても、タイ人から「まあ、日本人だからしょうがないな」と寛大な扱いを受けることが多い。
これがタイローカル企業に入った場合は、「何でタイ語も出来ないのに、ウチの会社に来たのか?」という対応を、一緒に働くタイ人から受けることになる。言語の能力を超えた愛嬌の良さとか、コミュニケーションスキルでタイ語の能力の低さをカバー出来ればいいが、そうでない場合、タイ人から各種の嫌がらせを受けることも予想される。
タイ人の方も案外、「日本人社員はタイ人よりも多くの給料をもらっている」ということは知っていて、サラリーの面からも、タイ語力や仕事力などで、その会社にいる存在価値を示す必要がある。存在価値を示せない場合、タイ人の嫉妬心や反感を買って、その会社に居づらくなって退職せざるをえなくなるのだ。
タイ語のヒアリング、スピーキングのスキルが覚束ないと自覚しているのであれば、タイローカルへの転職の気持ちは抑えて、日系企業にいる間に少しでもタイ語の能力をアップさせておくことである。
タイ語のスキルアップは諦めて、それでもタイ現地採用を続ける
これも悪く無い選択である。タイにある企業で、とくにタイ語が使えなくても業務上問題ないとされる職場は結構ある。
とくにタイ語に対して苦手意識を持っていたり、どうしてもタイ語のヒアリング能力が伸びて行かないなど、タイ語の壁に打ち当たっていて、それでもタイにいたい、タイが好きでたまらない!という人にとっては、タイ語不問の職場で働き続けるのもいいだろう。
中には社内公用語がタイ語ではなくて英語という職場もある。そういうところでは、逆に英語を喋れなければタイ人から一目置かれる存在にはなれないという不思議な現象も起こる。タイ人の母国語であるタイ語を喋って語りかけても、返ってくる言語は英語であったりすると、「こちらが一生懸命タイ語を喋っているのに、何であのタイ人は英語で返答してくるのか。彼(彼女)には自国語に対しての誇りが無いのか?」みたいに考えることもある。
そういうタイ人というのは概してミーハーであって、若いときに欧米への留学なども経験しており、自らがタイ社会の中でエリートなのだという自覚もある。だから、そんな職場に入ったときには、タイ人から舐められないようにするために、英語の能力を磨く必要はあるだろう。
それから、「社内の人間が日本人のみ、日本語だけで業務できます」という会社もある。それも、コールセンターのような月収30000バーツというような低賃金の職場ではなくて、月収50000バーツ以上の職場でも日本語のみで勤務可能のような求人もあるから、求人案件はマメにチェックしたいものである。
いずれにしても、タイで現地採用を続けるにあたってのメリットは、やはり、日本よりは労働がキツく無い会社が多いということがあげられる。
日本でよく言われるのはブラック企業の問題だ。確かにタイにもブラック企業は存在するのだが、そのブラックの度合いというのが、やはり日本のブラック企業と比較すれば、タイの企業はゆるいという印象を持っている。
そういう労働環境の中で、日本よりは低賃金かもしれないが、平均的なタイ人労働者よりも高額のサラリーをもらいつつ、温暖なタイの気候のもと、ゆるく長く働いて行くというキャリアプランも決して悪くは無いだろう。
つまり、タイで働くにあたって、「絶対にタイ語が上級レベルでなければならない」というわけでは必ずしも無いということだ。
何と言っても日本の職場は過酷である。仕事の成果物へのクオリティーも高いものを要求されるし、一旦会社に入ったら、「社会人として云々」みたいなうるさいことを会社から言われることも多い。
タイの会社に来れば、日系企業であっても、タイ化したゆるさというものが現出してしまうものである。
日本人サラリーマンとして10年以上かけて厳しく日本式の仕事のやり方、会社の運営の仕方を叩き込まれた人であっても、タイ駐在となれば、やはりどこかゆるくなってしまうこともある。
そうした会社に現地採用として入れば、タイ式なゆるさを享受できるというわけだ。
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