辞めると言って引き留められることは殆どない
タイで現在勤務している会社の退職を決意したとする。上司や社長は何と言うだろうか、果たしてすんなり辞めさせてくれるだろうか? 色々な不安が頭をよぎると思う。
結論から言えば、タイ現地採用の場合に、退職の意志を伝えた後に引き留められることはあまり無いと思っておいたほうがいい。
会社の就業規則や雇用契約書などを見ると、「会社を辞めたいときには1ヶ月前に告知しなければならない」などと書いてあったりする。そういう文言を発見すると、足抜けがしにくいのではないかと感じてしまうこともあるに違いない。
辞めると言ったら即日で退職もありうる
筆者が経験したケースでは、わずかに一社から引き留められただけで、あとのケースでは一切の引き止めが無かった。
辞めようとしている人材がどれだけ会社に貢献していたか?にもよるだろう。また、その人材が会社にとって掛け替えの無い存在になっているかにもよるに違いない。
ただ単に毎日会社に来て、給料をもらってましたというような場合はどうか。そういう人材を引き留めても給料だけは1日ずつ発生するから無駄が生ずる。タイでは「辞めます!」と告げた即日に退職になることもある。
引き留められるときは会社から余程気に入られていたということ
社内ニート状態で、穀潰しでグータラな自らの仕事ぶりを自覚していて、それでも退職を告げて上司から引き留められたら、上司から相当気に入られていたと思った方がいい。それは、仕事の成果云々ということよりも、人間性や将来性が高く評価されていたことを意味する。有り難いことだし、感謝すべきことである。
とくに、同じ日本人同士であっても、日本人駐在員は部下の現地採用に対してドライなことが多い。駐在員たちはお互いに同じ会社の仲間、家族の一員という認識かもしれないが、現地採用というのは傭兵のような存在である。
駐在員にとっては現地採用は金銭的な交換の対象でしかない。すなわち、現地採用が「使える人材」だったら大事にするけれども、「使えない人材」でなおかつグータラしているようだったら、容赦無く切り捨てることもやぶさかではないだろう。現地採用に恩情を持って接しても、駐在員は何も得することが無いからである。
これは日本国内の非正規雇用と正社員の問題にも通じる。正社員は会社という「大家族」に守られていて、互いに尊敬し合って気分が良いが、非正規雇用の派遣社員や契約社員はその関係性の外に存在する。だから、非正規雇用のスタッフは疎外感や不公平感を感じたりもする。いやはや、日本企業の非正規雇用の問題というのは海外にまで伝播しているのである。
また、この問題は日系企業に勤務する「仕事が出来るタイ人」にとっても関係してくることだ。どんなに仕事が出来たとしても、そのタイ人はローカルスタッフという扱いを受けて、日本本社で採用された駐在員と同程度の給料や待遇を受けることはほとんどないと聞く。これこそまさに同一賃金同一労働の原則に反する良い見本である。だからこそ、仕事が出来るタイ人で高給を求めるタイプは日系企業を避けて、非日系の外資系企業への就職を狙うことも多いらしい。
次が決まってなかったら退職後の転職活動資金をたっぷりと用意しておく
はっきり言って、引き留められることを心配するよりは、退職して転職活動をするときには資金が十分にあるかどうかに留意した方が余程現実的である。(転職活動の資金については当サイトの下記ページを参照のこと。)
※タイで仕事を辞めて転職活動するなら最低でも15万バーツは用意しておきたい
十分な資金が無いというのであれば、在職中に次の職場を見つけるか、現在の職場で居心地が悪かったとしても我慢して居座って貯金をしておくかである。
まとめ
今回記事にしたような事柄というのは、日系企業に根ざす構造的な差別の問題に起因している。つまり、本社採用の駐在員(ウチの人)か、現地採用(ソトの人)かという話である。ウチの人にとっては、ソトの人がどうなろうと知ったこっちゃないというわけだ。どうあがいても、日系企業に現地採用で勤める限りは、この問題からは逃れられそうに無い。
タイで営業をやっていると、たとえば取引先の日本人と遭遇したときにも、「駐在員か、現地採用か」というのを確認してから会話をスタートさせるものである。そういうときに、筆者などはルサンチマンを抱きやすい性質であるから、嫌な気負いを感じて身構えてしまうのだ。
駐在員の方としても、相手が現地採用だと分かったら、決して「平等に」付き合おうなどとは思わない人が多いだろう。そういうときに、現地採用としては「駐在員の方々は責任も重くて大変ですね!我々みたいな現地採用とは仕事の重みが違いますよね。いやいや、ほんと、ご苦労様です!」という風にあくまでやんわりと駐在員を立てる方向で(内心は小馬鹿にしていたとしても)対応するのが、現地採用の世渡りという観点から非常に大切なのである。
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