タイの会社の社員旅行に参加すべきかどうか
タイにある会社でも社員旅行を実施している企業が多いようだ。これを書いている筆者も社員旅行への参加についてはかなり悩んだ。なぜなら、端的に言って社員旅行は面倒くさいからである。
何しろ上や周囲に気を遣う。会社の付き合いだから仕方なく参加するのだが、帰ってきた後はぐったりである。
それにしても、社員旅行で嬉しいのは一体誰なんだろうか。社長や一部の重役連中、上司たちであろうと思う。彼らは若い下っ端の連中からお酌をされると嬉しいだろう。若いやつが皆の前で馬鹿をやって(一発芸などを披露して)恥ずかしい部分をさらけ出すのを眺めながら優越感に浸れる。
社員旅行が従業員にとっての福利厚生の一つなんて嘘っぱちも甚だしいところだ。若い社員の多くは社員旅行の醜悪な偽善に気付いているのだ。
これも浮世のしがらみであることは承知している。だが、どうしても社員旅行には参加したくないという向きもいるはず。ここでは、筆者のケースを題材に、タイの会社における社員旅行の実態を明らかにしていこう。
アユタヤのプレス工場ではカンチャナブリに行った
タイで現地採用として最初に働いたのはアユタヤのプレス工場であった。その工場においても、年に一回、社員旅行が催されていた。
その年の行先はカンチャナブリであった。
社員旅行の当日驚いたのは、事務所のタイ人女性たちがお揃いのTシャツを着ていたことだ。ワインレッドのお世辞にも趣味の良いとは言えないTシャツを着ながら、バスの前でポーズをとって写真撮影などしていた。
それを見ながら「ああ、タイ人にとっては社員旅行というのは相当大切なイベントなのかもしれないな」と思った。
きゃっきゃ、きゃっきゃと浮かれ騒ぐタイ人ばかりであって、そこには、「ケッ、社員旅行なんて下らねえヨ!」などと捻くれた態度を表す人は誰もいなかった。皆、純粋に楽しもうとしていた。
それから、バスに乗り込んで出発した後が悲惨であった。出発してすぐに大音量のディスコ音楽が流れ始めた。その大部分はタイポップスというんだろうか、耳をつんざく騒音が延々と続くのである。
隣にいる人と会話などできないくらいの大音量だった。その騒音が出発から帰りまでずっと続く。タイ人はその音楽に合わせながら踊り、歌い、騒ぐのである。
現地採用の日本人の私としては、郷に入れば郷に従えということもあって、そのうるさいディスコ音楽に合わせて踊った。タイ人にしてみたら、日本人がぽつんとつまらなそうに座っていたら、機嫌を損ねたり、不満足に思ったりするだろうから。そういう同調圧力がタイにもある。すなわち、周りの皆が楽しそうなノリでやっていたら、そのノリに合わせないといけないのだ。
ひたすらビールを飲み、音楽にあわせて踊り続けるということを、車中ではずっとやっていなければならなかった。日帰りのバス旅行だったが、帰ってきてしばらくの間、耳がおかしくなって、平常通りに聞こえなくなってしまったほどだ。
チャチュンサオの射出成形工場では、社員旅行への参加を断った
タイの会社における社員旅行がどういうものかというのが私には分かっていたので、それ以来、どの会社でも社員旅行への参加を促されたら断ろうと心に決めていた。
チャチュンサオの射出成形工場の社員旅行はカオヤイに行くらしかった。1泊2日の日程である。日本人駐在員が多い会社だったので、「昼間は日本人同士でゴルフ。タイ人従業員はタイ人だけでカオヤイを観光」するという旅程が組まれていた。
私はゴルフに参加するのも、タイ人従業員と一緒に観光をするのもどちらも嫌であった。それから、夜の宴会に参加して、会社の人たちと親睦を深めるのも避けたかった。宴会は大の苦手である。宴会が始まると30分~1時間程度はご飯や酒も美味しいのだが、それ以上になると飽きてくる。その場にいるのが苦痛になってくるのだ。ましてや、会社の宴会だ。普段以上に気を遣わねばならないことは目に見えている。
私は意を決して、日本人の総務担当に対して社員旅行不参加表明を直談判した。
「社員旅行は絶対に参加しなければならないんですか?業務ではないですよね?」
「絶対ではないけれど、、、会社としては出来れば参加して欲しいです」
「そうですか、、、。それなら私は不参加ということでお願いします」
このように直談判をして、私は社員旅行への参加は免れた。
ところが、その後直属の上司から呼び出され、やんわりとであったが、「なぜ社員旅行に参加しないのか」を問い詰められた。私は丁重にその理由を説明して事なきを得たが、その会談の妥協案として、「来年の社員旅行には参加する」ということを約束させられてしまった。
とはいえ、その会社は早々に退職したので、それは単なる空手形だったことになる。
長く勤めるつもりなら社員旅行に参加した方がいい
以上が私のタイの会社における社員旅行体験だ。まあ、一度は社員旅行に参加しておいて損はない。何事も経験である。タイ人の社員旅行というものがどういうものかを身をもって体験するのは貴重なことだからだ。
そして、その会社に長く勤務する意志があるなら、社員旅行に参加した方がいいだろう。どんなに社員旅行が下らなくて、つまらなくて、偽善的に感じられる行事だったとしてもである。タイ人従業員との関係性を構築していく上で、社員旅行に参加しておけば、多少なりとも普段話さないような人とも会話する機会があるだろうし、社内におけるプレゼンスも示せるからである。
自分が新しく新入社員として入社しても、人数の多い工場だったら、タイ人からしてみれば、、、
「あの日本人、誰?」
ということになりかねない。
自分の存在をタイ人社員に知ってもらえるので、社員旅行はひとつのチャンスなのである。
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