タイ人部下に飯や飲み物をおごるべきかどうかについての考察

タイ人部下に飯や飲み物をおごるべきかどうかについての考察

タイで就職した場合、どうしてもマネージャーとして採用されることが多くなるだろう。タイ人部下の人数の多寡はあったとしても、管理者という立場に立たされることになる。かくいう筆者もそうである。

 

このページで考察したいのは、タイ人部下に対して食事や飲み物をおごるべきかどうかという問題である。

 

実際に私が遭遇したケースを振り返りながら、この問題について考える。

 

タイ人運転手に対しておごるべきかどうか

 

タイでは営業職でなくても、会社の外に行って仕事をすることもあるはず。大抵の場合、運転手付きの社有車が用意されているだろう。その運転手の労をねぎらって、ガソリンスタンドなどに立ち寄ったときに、飲み物をおごるべきなのかどうか。

 

筆者に関して言えば、「毎回はおごらない」というルールを自分の中で設定している。とくに筆者は営業職に従事しているので、毎回飲み物を運転手におごっていたらその出費もバカにならないからである。

 

そして、どんな飲み物をおごったらベストか?と問われたら、M150という栄養ドリンクをとりあえずおごっておけば無難だということだ。M150なら10バーツ程度で済むから、おごっても痛手は少ない。

 

これが毎回、アイスコーヒーをおごるとなると、1回で50バーツ以上の出費にもなる。とくに、最近のタイの物価の上昇の傾向も考慮に入れたいところである。

 

最近、判断に迷ったことがあった。営業のためにとある工業団地に出向いた際の出来事である。お客さんとのアポの時間も迫っていたのでクイッティアオでも食べて簡単に済ませようと思っていた。

 

道ばたにある屋台のような食堂で、クイッティアオを食べた。それで、どういうわけか、その運転手は食事を一緒に取ろうとするのである。その以前にもそういうことがあった。

 

何が気になるかというと、運転手と毎回ランチを取るということになったら、運転手のランチ代を払う羽目になるのではないかということだった。そうなったときに、屋台のクイッティアオならおごっても大した金額ではないが、ちょっと値段が高めの食堂には入りにくくなってしまう。

 

その食事で、私の方が先に食べ終えた。急いでいたのもあり、先に会計を済ませた。そしたら、店の店主は当然のように運転手の分も含めた金を請求してきた。私は二人分払ったけれども、あまり気分の良いものではなかった。食事を終えた運転手がやってきて、店主に金を払う素振りだけは見せた。私が、「あなたの分も払っておいたよ」と言ったら、運転手は礼を述べたけれども、何か釈然としないものが残った。

 

別に、運転手と食事をしなければならないという決まりは無いわけだし、一緒に食事するなら、どんなに収入差があろうが、割り勘にするのが礼儀というものだろう。

 

逆に、外出した社員が運転手と食事するときには、運転手の分の金も払うという決まりを作るなら、会社がその金を負担するべきである。

 

飲み会、食事会、その他でのルール

 

運転手へのおごりの問題は金額が大した額ではないので、それほど問題にはならないが、気をつけなければならないのは一般社員のタイ人との付き合い方である。

 

社内のタイ人たちとも多少気心が知れて来ると、勤務時間外に食事に誘われるケースも出て来る。
そうなると、複数が参加する飲み会、食事会ということになり、その出費は大変なことになる。

 

タイローカルのレストランなら、食事をして酒を飲んでも、一人分は大した金額ではないだろうが、数人以上で行ったら、下手すると2000バーツ、3000バーツの出費になる。

 

ここで大切なのは、決然とした態度で、「割り勘にしよう!」とタイ人に宣言することである。

 

もしくは、食事会が行なわれる前に、勘定について、タイ人との間で確認しておくことだ。これをやっておかないと、支払いのときに、

 

「金持ち日本人が払うのが当たり前」
「上司が部下に全部おごるのは当たり前」
「年上が年下の面倒を見るのが当たり前」

 

ということで、自動的におごらされるのである。

 

どこまでも図々しいタイ人もいるから要注意!

 

タイ人社員、同僚と食事に行っておごることについて、素直に感謝の意を表してくれるタイ人ならいいが、中には、「良い財布が出来た」とばかりに、何かと言えばおごらせる、金を支払わせるようなタイ人もいるから気をつけねばならない。

 

こんなことがあった。私はタイの「おごり文化」について知りつつも、ケチな日本人を貫き通していた。

 

社内にいる図々しいタイ人女性が、「タイ人スタッフが外出するときに、果物を買って来るから100バーツよこせ」と言って来たのである。会社の皆で果物を食べるのだという。
100バーツぐらいなら、「まあ、いいか」と思ってしまい、ついつい払ってしまった。ただ、気持ち的には恐喝されたような不快な気分であった。それも、「他人からケチだと思われたく無い心理を利用した脅迫」のような気がして、余計にそのタイ人女性が狡猾で卑劣だと思ったのだ。

 

タイ人からケチだと思われることを恐れないこと

 

タイではキーニアオ(ขี้เหนียว ケチの意味)と他人から思われることを極度に恐れる文化があるという。

 

昔からよく言われるのは、日本人がタイ人の娼婦に恋をして入れあげてしまい、身ぐるみ剥がされるような話である。娼婦の地元のイサーンまで訪ねて行ったら、勤労意欲が著しく欠如した一族郎党がひょっこりやって来た日本人に群がって来るという構図だ。

 

恋をした相手だけではなくて、その家族や親族、関係の無い友人の面倒まで見なくてはならないというタカリの習慣である。

 

筆者のスタンスとしては、キーニアオだろうが、ケチだろうが全然構わないだろうということだ。どれだけ毅然とした態度で、「一緒に食事するのは良いけど割り勘にしよう!」と提案出来るか。
そこを妥協してしまうとズルズルと奢らされる羽目になり、タイ人から舐められて、財布としての存在としてしか認識されなくなってしまう。人間的な信頼をもとにした結びつきではなく、単に「おごってくれるから」というだけでタイ人部下が言う事を聞くというのだったら、あまりにも悲しいことではないかと思う。