タイでは試用期間に解雇されることも多い

タイでは試用期間に解雇されることも多い

タイ現地採用というのは、まさにサバイバルだなと思わせるエピソードをここでは書くことにする。このページでは、「試用期間内での解雇」の話を取り上げる。

 

日本では余程のことがなければ、試用期間内で解雇されるなんてことはないに違いない。
タイでは日本の常識は通用しないと思った方がいい。試用期間内で「使えない人材」という風に判断されれば、容赦なく人材を切るのが海外である。

 

試用期間内での解雇

 

筆者はこれまでに東南アジアの現地採用の就労現場において3度、試用期間で解雇された経験がある。バンコクにある某巨大ITベンダーに勤めていたときのエピソードを紹介する。

 

私はとあるシステムの営業に携わっていた。上司はとても忙しい人であり、私は入社早々ほぼ放置プレー状態になっていた。

 

システムの営業は未経験だったこともあり、自分が何から手を付けていいかわからない状態であった。

 

おまけに、単純に製品を売れば結果が目に見えるというタイプの仕事ではなかったため、成果を周囲に分からせることが非常に難しかった。

 

入社して3カ月ほどで、自分自身が社内ニート化していることを自覚していたが、上司が多忙であり、周囲からもあまり細かく監視されることもなかったので、ひたすら暇つぶしのエア作業に勤しんでいた。

 

といっても、私は努力しなかったわけではない。仕事では結果は出せなかったかもしれないが、やる気を見せようと、朝は7時前に出社していた。上司が現れる前に、自分のデスクのところにいて、パソコンの前で何やら作業をしているという風にしていた。

 

早朝出勤を欠かさずやっていたが、やはりそういうにわか仕込みの勤勉さでは、私のパフォーマンス不足をカバーすることは出来なかったらしい。

 

結局、私は試用期間の6カ月で解雇されることになった。このときは、ある意味解雇されてホッとしたことを覚えている。駐在員の上司からも気に入られていなかったし、仕事そのものも最後まで理解できない状態だったからだ。

 

30日分の解雇手当が支払われたのも有難かった。月のほぼ真ん中で退職し、その月の分の給与だけでなく、1か月分の給与を丸々もらえたのだ。これはかなり嬉しかった。期待していなかっただけに喜びも大きかったのである。

 

私はなぜ解雇されたのだろうか。確かに、与えられたミッションをこなすことが出来なかったのが一番の理由だろう。だが、それだけではないと今では分析している。

 

「上司に気に入られなかった」というのが一番の問題だと思っている。その上司というのはいかにも体育会な人物であり、学生時代から体育会を歩んできたような人だった。

 

一方の私は帰宅部ではないが文系であり、体育よりもアートを愛する人間で、仕方なく金のためだけに会社で働いているタイプの人間だ。

 

要するに価値観が大いに異なったのである。上司にしてみれば、私という人間を観察しながら「この男はウチの社には向かんな」ということを判断したんだろう。

 

私としては、解雇ということが無ければ、その某巨大ITベンダーに居座ることもやぶさかではなかった。社風も気に入っていたし、上品で頭の良い秀才が揃った会社だったから。
とはいえ、労働者の側で一方的な会社への片思いということもあるものだ。

 

これを読んでいる皆さんも、タイで試用期間のときは非常に心落ち着かないだろう。大丈夫だと思っていても、やはり心配なこともあるはず。

 

解雇を感じ取ったらすぐにでも転職活動を開始したい

 

試用期間中というのは不安なものである。

 

もしかしたら、切られるかもしれない
仕事のパフォーマンスは足りているだろうか

 

色々な不安が頭をもたげる。

 

これまでの自身の経験でも何となくだが、「解雇されるかもしれない」という予感はしたものである。

 

とはいえ、会社の方も、「試用期間内で解雇します」とは雇い入れ早々に教えてくれるものではない。

 

筆者の経験でいえば、新しい会社に入社して1か月以内というのは言わば「ボーナス期間」であり、社内の人たちも新人に対してあれやこれや良くしてくれるものである。新人ということで大目に見られて、チヤホヤされるのが入社して一か月なのである。

 

中には、入社して間もない新人を自分たちの派閥に入れようと画策してくることもある。社内での色が染まっていない新人が派閥から目を付けられるのも仕方がないことだ。

 

入社後1か月ほど経過して、じわりじわりと会社はその本来の「牙」をむき出しにしてくる。その組織が持ってしまっている本音の状況というのが新人にも見えてくるものなのである。

 

そういう経過を辿って、あるときには派閥抗争などに巻き込まれて、とうとう管理者から、「社風やカラーに合わない」という理由で解雇されることもある。

 

そのため、少しでも解雇の予感を感じ取ったら、転職活動を開始するというぐらいの気構えでいてちょうどいいぐらいである。

 

「解雇されるかな、されないかな」と疑心暗鬼の状態でいるぐらいなら、人材エージェントへ再登録に出かけたり、求人に応募したりといった具体的な行動に出た方が賢明だ。

 

早く転職活動を開始すればするほど、また、転職活動に時間を取れれば取れるほど、良い求人に出あう確率が高くなる。

 

転職市場に良い求人が出現するもしないのも運とかタイミングによるとしか言えない部分がある。

 

それに、会社から引導を渡されて(すなわちクビを宣告されて)、転職活動を開始するよりは、あらかじめ会社は自分の方から見限っておいて、次の会社の内定を得ておけば、万が一、悪い予想が当たって試用期間内に解雇になったとしても、精神的なダメージを少なくできる。

 

就労中に転職活動することについて、面接をどうするかという問題は残るが、これはもう会社を休んででも面接に行くしかあるまい。

 

試用期間というのは会社にとって労働者を見極める期間でもあるだろうが、労働者にとっても、その会社が自分にとってふさわしいかどうか見極める期間でもある。