タイの会社で生き残るには太鼓持ちのスキルを発揮しても良い

タイの会社で生き残るには太鼓持ちのスキルを発揮しても良い

タイの会社で生き残るには太鼓持ちのスキルを発揮しても良い

 

タイで現地採用をする上で、読者の皆さんはどういう働き方を希望しているだろうか。おそらく、多くの人は仕事のスキルを高めたいと思っているはずだ。誰しも、自分には何らかの得意分野があると信じていて、その得意分野を実際の会社の仕事で活かしたいと願っているはず。

 

職業的なスキルが高まれば、会社での居場所も確保出来るだろうし、自然と長く勤めることができるだろう。スキルの高い人材で高い成果をあげていれば、少々我侭であろうと生意気だろうと、会社から許されることもある。

 

反対に、スキルが低く、仕事で低い成果しかあげられない場合、それをどうやってカバーするか?というのが問題になってくる。

 

会社で生き残るには、以下の二点のどちらかで勝負するしかない。

 

  • 純粋な仕事による成果
  • 人間関係、社内政治で生き残る

 

どちらも中途半端とか、低いパフォーマンスとなると会社には居辛くなるものだ。

 

二番目の「人間関係、社内政治で生き残る」だが、人によってはそういうのは邪道だと思うこともあろう。確かに、ゴマスリや太鼓持ちは格好悪い。見ていて決して美しいものではない。

 

だが、サラリーマンとして命がけでサバイバルをしていこうと考えたら、太鼓持ちになってでもタイの会社で生き残るという選択は決して悪いことではないだろう。

 

ゴマスリにもスキルが要る。また、ゴマスリというのはその人の長い間の人生経験とか、周囲の人への対応など、すべてが反映されることなので、その技術を一朝一夕に身につけることは難しい。上手なゴマスリ人間というのは、上司にも同僚にも部下にも誰に対しても不快な思いをさせないのである。

 

(よく、上司には媚び諂うが、部下には威張り散らすようなゴマスリ人間がいるが、そういうタイプのゴマスリは二流、三流もいいところである。社内の誰かから恨まれるようなゴマスリは程度が低いのだと申し上げておきたい。)

 

タイの会社で遭遇した太鼓持ちタイプの日本人ビジネスマン

 

タイにもゴマスリで生き残るビジネスパーソンはいた。

 

筆者がタイローカル企業に勤めていたときに、ゴマスリタイプの日本人ビジネスマンと出会った。私がヒラの営業マン、彼は営業部長という肩書きであった。

 

彼は40代前半の日本人男性で、日本では資源系の大手企業に勤務していた。色黒で爽やかな、いかにも商社にいそうな(筆者の勝手なイメージだが)快活な印象を与える好人物であった。

 

タイに来て件のタイローカル企業に転職してからは、全くの畑違いの仕事ということもあり、新しい仕事を覚えるのは相当苦労しているようであった。

 

営業職だったが、売上は芳しく無く、タイの会社であれば試用期間で解雇されていてもおかしくない成績だった。だが、彼は見事に試用期間を突破したのである。

 

私とは直接的な仕事のカラミが無かったので、社内では世間話をする程度だったが、一緒に社内にいるうちに彼の巧みなゴマスリぶりを観察することが出来た。

 

そのゴマスリの特徴といえば以下のようにまとめられる

 

社長への適度な生意気さ

 

社長はタイ人であり、そのゴマスリ日本人男性よりも10歳程若かっただろうか。社長は日本への留学も経験したエリートであり、日本語も巧みにあやつる。大変な資産家である。

 

そうした人物に対して、ゴマスリ日本人男性は心を開いて相手の懐に飛び込むのが上手いなと感じさせるものがあった。敢えて生意気な態度を社長に取ることによって、社長から可愛がられるという高度なテクニックも用いていた。生意気と絶対服従の態度を絶妙なバランスで使い分けていたのである。

 

富裕層の人々となると、単純にお世辞を言っているだけでは彼らの心に響かずに気に入られないケースもある。アメとムチの使い分けではないが、そのゴマスリ日本人男性は、若い社長に対して、「何をするか分からないハラハラ、ドキドキさせるような面白さ」を与えていたんじゃないかと思う。金持ちの社長にとってみれば、「根性があって可愛い奴だ」という印象を持つのである。

 

社内のタイ人へのゴマスリも忘れない

 

タイの会社で働くというのは、人間関係の問題について、日本人だけでなく社内のタイ人のことも含めて考えねばならなくなる。ただ単に真面目に働くだけでは、タイ人スタッフからの支持を得にくい。

 

胸襟を開いて、タイ人に対しておどけてみせたり、ひょうきん者として振る舞って、タイ人に気に入られた方が社内での居場所を得やすいのである。

 

そのゴマスリ日本人男性は、タイ人との関係性においても素晴らしいゴマスリを発揮していた。彼のタイ語は決して上手く無かったが、大げさなボディランゲッジを駆使して、タイ人スタッフのハートを掴んでいたように見える。とくに、女性社員に対してはわざと怒ったフリをするなどして、笑いをとっていたものである。

 

部下への態度も丁寧であった

 

彼と接していて驚いたのが、彼の方が私よりも5歳ほど年上だったが、終始一貫して「です・ます調」の丁寧な口調で話していたことだ。部下にも丁寧に接することで、社内に余計な敵を作らないことは大切なことだろう。

 

まとめ

 

私はそのゴマスリ日本人男性との出会いによって、その一流のゴマスリの仕方から多くを学べたような気がしている。仕事面で学ぶことは一つも無かったが(何しろエクセルもロクに扱えない人であった)、太鼓持ちの技量だけは確かなものだった。

 

よく転職市場で話題に挙げられるのが、「ゴマスリの技術はその会社には通用するけれど、転職して他社に行ったら通用しない」ということである。すなわち、社内政治で生き残る際には、上に気に入られればいいが、転職した途端にその人間関係がゼロになるので、他社で通用するスキルとは言えないという意見だ。

 

筆者はこれには異を唱えたいと思う。転職したとしても、転職先で雇用主に媚びるなりして、新たに社内政治を生きることを考えたらいいだけだろうから。

 

転職先でこれまでに通用して来た会社のルールが通じないのは当然のことである。上司も変われば同僚、部下の面子も変わって来る。人間の性格もすべて変わるわけだ。

 

一流のゴマスリの技術さえ持っていれば、周りの相手に合わせて柔軟に対応を変えられるだろう。他社に行ってしまった時点で通用しなくなるゴマスリというのは、所詮は二流、三流のゴマスリに過ぎないのだ。

 

自分にはゴマスリの才があると思う人であれば、タイの会社において、居座ることは決して難しいことではない。その為に捨てなければならないのはプライドだろうか。大事なことは、早い段階で自分は仕事面で頑張ってスキルを磨いて生きて行くのか、それともゴマスリの能力を高めて行くのか判断し、それに向けた努力を重ねて行くことである。