タイローカル企業で機械業界の営業職として働くWさんの話
- 名前:Wさん
- 年:40代半ば
- 業界:機械業界
- 職種:営業職
- 現地採用歴:15年
- 給与:90,000THB
自らを社会不適応者だと言い切るWさん。15年に及ぶタイ現地採用生活は波乱に満ちたものだった。現在はタイローカル企業でトップセールスマンとして活躍している。Wさんの言葉にはタイで働く上での数々のヒントがあるような気がした。
タイに来たきっかけ
最初は旅行者としてタイに来て、そのままタイに居着いたという感じです。日本の仕事を辞めてアパートを引き払い、その翌週ぐらいにタイに遊びに来たんですよ。所持金は日本円で30万円ぐらいでした。
仕事探しのときに人材紹介会社は使ってません。確か、ネットかフリーペーパーの広告だっと思います。不動産屋での職が見つかりました。
その会社には日本人社長のほかに事務系と営業系で2〜3人の現地採用がいました。あとは事務の仕事をタイ人がやっていました。
私は営業職として入社しましたが、慢性的に人手不足でした。自分としては、1ヶ月ぐらいちょっといて転職するかぐらいの軽い気持ちで入ったんですよ。「日銭稼ぎ」という感覚だったんですが、それが1年過ぎ、2年過ぎと長く勤めることになりました。
会社はトンローにありました。休日は日曜のみです。勤務時間は朝の9時から夜の20時、21時ぐらいですね。といっても、営業職なんでお客さんの対応をするときには日曜でも出勤していました。月に1日だけ休めるとか、忙しいときには休みがゼロのこともありました。
休みが少なかったのでそれがストレスになっていたからでしょうか、タイ人の運転手と自宅の駐車場で殴り合いの喧嘩をしたこともありました。
仕事の内容ですが、不動産の営業として、お客さんに賃貸のコンドミニアムを紹介するのが仕事でした。お客さんのほとんどは駐在員でした。私がその会社で働いていた頃はバンコクの不動産屋は割と儲かっていたんじゃないかと思います。今はどんどん日系の不動産屋が増えて来てますから。競争が激しくなっていると思いますよ。
給料は完全固定給でした。最初は歩合制で売上の3%をもらえると言われていたんですが、実際はそうじゃなかったですね。固定給部分の昇給はしましたが。
仕事について忘れられないエピソードがあります。不動産業というのは、入居者が決まった後、入居者が部屋に入るまでに部屋を掃除しておかなければならないんです。スタッフが不足していたので、その掃除が出来ていなかったことがありました。
当然、お客さんは激怒しましたよ。日本人の駐在員の方でしたが。仕方が無いので私も部屋の掃除をやることになりました。床のタイルの溝についた汚れなどを薬剤をつけてゴシゴシこすって落としたりとか、なんだかんだと夜の22時までかかってやっと掃除を終えました。
そのお客さんは良い人で、「これで何か食べなよ」と言って2000THBくれました。
トンローの不動産屋で働いていた頃は日本人の事務の同僚とよく週末飲みに行ったのを覚えています。ドイツ料理とか、イタリア料理とかやたらと高級な店に詳しい人で、たかる人でした。でも、面白い人だったからいいんですけどね。
このときに今のタイ人の奥さんとも知り合いました。といっても、職場で知り合ったわけではありません。
会社を辞めた理由ですが、いくつかありますね。社長とタイ人の経理担当者が金銭のことでトラブっていました。
私はその経理担当者にパスポートを預けっぱなしだったことに後で気付きました。ビザの更新もされていないので、不法滞在になってしまっていたんですよ。
社長から、「お前、今すぐこの金をもってビエンチャンへ行け!」と言われてラオスのビエンチャンに行ってきました。当時はどんなにオーバーステイしても20,000THB払えば許されたんですよ。今はもっと厳しくなっているらしいですがね。
あとまあ、給料に歩合がつかないという不満もありました。それで、折よく他社からヘッドハンティングされたのを機に転職することにしました。
タイ上場企業の不動産会社へ入社
新しく入った会社はタイでも有名な不動産会社でした。給料も倍になりました。知人からも「これで人生あがりだな」と言われましたし。大企業で待遇もよく、とても満足していました。
仕事の内容はサービスホテルの統括マネージャーでした。サービスホテルは全部で8棟あって、そのすべてを管理するのが私の仕事でした。マネージャー役でもありましたし、セールスもしました。机の前で事務をしているというよりは現場寄りの仕事でしたよ。
そこには5〜6年いて退職しました。なぜ辞めたのかというと、飽きたのもありますし、嫌になったんですね。たいてい5〜6年いるとどの職場でも嫌になります。知人からも、「何であんな良い会社を辞めちゃったの?」と聞かれますけど、、、まあこればかりはしょうがないですね。
それから、ガチガチに堅い会社でもありました。会議も多くて、社内政争みたいなものもありましたよ。そういうのが嫌になったんだと思います。
就職活動中に家を買う
タイの不動産会社を辞めた後、半年ぐらいプラプラしていました。日本にも一時帰国しました。タイに家を買ったのもこの頃です。不動産屋時代は金を使う時間もなく、飲み歩きもあまりしないので、貯金はたくさんありました。
家財道具を買ったり、引っ越しをしたり何かと時間はかかりました。多分、会社で働きながらだったらそんな時間も無くてもっと大変だったかもしれません。
結婚サービス会社へ転職
不動産屋に勤めていた頃に知り合った日本人の方から、「ウチの会社で働かないか」と言われて、バンコクにある結婚サービス会社に入りました。給料は14万THBと高給でしたが、業種や社風が自分には合わなかったです。
何かと軍隊式の会社だったんですよ。朝礼で社訓を皆で叫んだりとか。そういうのが合わないので、結局1ヶ月ぐらいでその会社は退職しました。
現在のタイローカル企業へ転職
退職後、どの業界に進もうかと考えました。そのとき、もう自分にとってホテルや不動産業界は魅力の無いものになっていました。未知の世界に飛び込もうと思って製造業に来ました。人材紹介会社はこのときに初めて利用しました。
「次の職が決まるまでの腰掛け」とか、「日銭稼ぎ」というぐらいの軽い気持ちで働き始めたのですが、もう勤務開始から3年半以上経ちます。
機械業界で営業職をしているんですが、最初の1年はきつかったですよ。何しろ、右も左も分からない業界ですから。製造業にどういう性質の人がいるかも分かりませんでした。業務の知識もゼロから勉強しましたし。
会社からは社有車を貸与されていて、自分で運転しています。ガソリン代や高速代などは会社負担です。
会社は隔週土曜日休みになっています。といっても、仕事が無ければマイペースでやれています。夜、自宅で仕事をするときもありますし。
会社には1週間のうち2時間程度しか出社していません。監視されない状況が気に入っています。といっても、今の状況を作り出すまでは大変でした。
会社から監視されないようにするには、「一生懸命やっているように思わせる技術」が必要なんですよ。これは営業成績の問題だけではありません。もちろん、成績が悪ければ社長から文句を言われますが、かといって、成績がトップだというだけでもダメですね。
今は会社からへんに期待されているので困っています。私はプレーヤーの営業マンとして働いているんですが、社長からもっと全体を見るような仕事を任せられる可能性があります。管理の仕事に就いたとしても、おそらく昇給はしないでしょう。
まあ、仕事は相変わらずクソだと思ってますよ。
タイについて
タイ人と働く事はしんどいので、彼らと一緒に働きたく無いですね。自分だけで仕事を完結出来ればベストだと思っています。
タイ人との仕事の関わりですが、事務的なメールのやり取りとか、現場とのコミュニケーションぐらいですね。可能な限りタイ人とはコラボしないようにしています。
今の会社でも二年目ぐらいまでは私も熱血型の上司を演じてて、タイ人を怒鳴っていたりしたんですよ。でも今はもう完全に諦めています。
タイ上場企業の不動産会社に勤めていた頃は、周りのタイ人のスタッフの質も良かったんですが。さすが一流企業なだけあって優秀な人間が揃っていると思いました。
これまで働いて来た中で現職のタイ人スタッフの質は一番最悪です。底意地が悪いタイ人もいます。底辺のタイ人が多いのもあって、デリカシーが無いんですね。
タイ人スタッフに対しては、「期待をしない」ようにしています。
タイ語について
仕事をする上ではタイ語には不自由していません。タイに来て最初の一ヶ月ぐらいですが、勤めていた不動産屋から、「タイ語学校でタイ語を勉強しろ」と言われたので勉強しました。
タイ語の読み書きは出来ません。タイ語は耳で覚えました。奥さんがタイ人なので、タイ語に慣れるのは早かったですね。
仕事をしていて楽しいことはありますか?
ありませんね。家で仕事をしていた方がはかどります。会社にいると嫌な気持ちになってくるんですよ。なるべく会社の外か家で仕事をするようにしています。
仕事のやりがいはありますか?
「仕事は自分の中だけで完結したい」と私は考えていて、今はそれが出来ています。効率的に仕事を自分の中でまわすことが私の理想なのです。
今後について
独立でも何でもいいんですが、自分でまわせる仕事がしたいです。業種を問わず気軽に出来る稼業に就きたいです。
一人だけで仕事をするというのが私の最終目標です。他人とコラボする仕事はしたくないのです。
これからタイで働きたい人へのメッセージ
やり方さえ間違わなければ、「社会不適応者でもあっても、これぐらいはできますよ」ということは伝えたいです。
あと、会社で働くと、どこの国でも同じような苦労はします。