人材紹介会社で営業コンサルタントとして働くJ・Mさんの話
- 名前:J・Mさん
- 年:30歳
- 業界:人材紹介
- 職種:営業コンサルタント
- 現地採用歴:4年半
- 給与:64000THB
タイに来たきっかけ
大学時代にはバックパッカーをやってました。それで海外で働くことにはもともと興味があり、英語を使った仕事がしたいと思っていました。大学を卒業したらメーカー、商社に行きたかったのですが、その当時、リーマンショックの影響もあって、就職活動をしても自分の希望する会社には行けませんでした。
働かないわけにはいかなかったので、新卒のときには小売業界に入りました。一般消費者向けの接客業でした。
残念ながらその会社は海外にほとんど縁の無い会社でした。東京の町田で一人暮らしをしながら、二年間働きました。
シンガポールで働いていた大学時代の先輩から、「東南アジアは活気があって面白い」と言われ、アセアンで転職することを決意したんです。
会社は辞めて、町田のアパートは引き払い日本を飛び出して就職活動を開始しました。人材紹介会社に求人を紹介してもらいながら、インドネシア、ベトナム、シンガポール、タイで就職活動をしました。
その頃の所持金ですが、日本円で22、3万円ぐらいです。1泊200〜300円のゲストハウスに泊まっていました。ベトナムには大学のときに知り合ったベトナム人の友人がいたので、その人の家に泊まらせてもらったこともありました。
「人材紹介」という業界を選んだのは、インドネシアの日系の人材紹介会社のエージェントの方にとてもよくしてもらったことが大きいです。人材紹介業で「人の役に立ちたい」という気持ちが芽生えたんです。
7社ぐらい受けて受かったのがタイの人材紹介会社でした。
どんな仕事ですか?
業務内容について
求職者の登録、斡旋、サポートが主な仕事です。インターネットで応募された求職者の方の履歴書をスクリーニングし、ヒアリングを行ないます。
法人に対して、新規開拓営業もします。
職種と給与の相場
現地採用の職種と給与というのは、以下のような感じですね。
•営業事務、人事総務、経理、生産管理 〜70,000THB
(私がこれまで見た中では、これらの職種の中に75,000THBという求人はありました。)
•ITプロマネ、エンジニア(電気、自動車、化学、建設など)60,000〜80,000THB
•物流、貿易事務、輸出入業務、フォワーダー、倉庫管理 50,000〜70,000THB
•翻訳(英語の技術翻訳) 50,000THBぐらい
•通訳 タイ語 60,000〜70,000THB
英語のみ 55,000〜60,000THB
•開発(R&D) 70,000〜80,000THB
肩書きによって、給与も変わって来ます。
•セールス 50,000〜60,000THB
•アシスタントマネージャー 60,000〜70,000THB
•マネージャー 80,000THB〜
•工場長、製造マネージャー 100,000THB〜
タイ語の翻訳、通訳の仕事について
タイで現地採用で働きたい方の中には、「語学力を活かした専門職に就きたい」と考えている方もいるでしょう。でも、通訳、翻訳というのはタイ人がメインの職種なんです。
タイ人の方がコストを抑えられるからです。日本語検定2〜1級に受かったタイ人求職者の給与は月額30,000〜50,000THBぐらいで、彼らの給与も年々上がっています。また彼らの仕事は英語や日本語が出来ない他のタイ人スタッフのサポートも含まれています。
日本人求職者の方で、語学のようなツールのみで生きて行くのは大変だと思います。
10万バーツ以上の求人について
工場長や製造マネージャーの仕事の給与というのは10万バーツ以上であり、この給与の相場は10年前と変わっていないということがあげられます。タイの物価も年々上昇しています。優秀なタイ人は、日本人と給与面でほとんど変わらないこともあります。
タイ人でGMクラスとか、銀行で働いている方の中には、20万バーツもらっている人もいます。中には、30万バーツもらっている方もいました。その方はタイのK銀行の頭取一歩手前だったという方でした。九州の大学を出て、日本語がペラペラの方でしたよ。
日系企業の場合ですと、これまで私が見た中ではMDの求人で20〜30万バーツというのがありました。そういう大型案件は1回のみでした。
日系企業はなるべく人材について「コストを抑えたい」と考えているところが多いです。タイ系あるいは海外の外資系になりますと、「優秀な人材をお金を出してでも取りたい」という考えがあるようです。
タイ人求職者の場合、キャリア志向ではなくて、のんびり働きたいという方は日系企業を選びますね。
その他、日系企業とタイ系・外資系の違いについて言いますと、日系企業というのは求職者の転職回数を気にします。タイ系・外資系はそんなに気にしません。
両者の共通事項としては、年齢のことを言いますと、管理職でしたら40〜45歳、場合によっては50歳でもOKです。スタッフレベルになりますと、35〜40歳までがほとんどになります。
営業事務のような職種の場合、35歳までが限界になります。総じて日本人求職者については、35歳〜40歳程度で、35歳からの転職となりますと即戦力を求められます。今までの経験を活かすことができる職種に就きたいところです。
あと、職種についてですが、タイだと個人向けの営業というのはあまりありません。不動産業界ぐらいしか無いですね。そういう意味では、タイで現地採用をするよりも日本の方が選べる職種が多いと思います。
ゴルフについて
ウチの会社の場合は、週末のゴルフの強制参加は全くありません。お客さんと好きだったら行って来ていいと上司に言われています。ただ、タイでとくに営業職に就いた場合には、ゴルフは付いて回ると思った方がいいでしょう。
とくに商社やメーカーの求人ですと、求人票に「ゴルフや接待が可能な人」とはっきり記載されていることもあります。また、「ゴルフ代を自腹で出せ」と言われることもあるみたいです。
ゴルフを断る口実ですか?「腰が悪いから」と言ってゴルフを断っている求職者の方は前にいました。あと、「首がよくないんで、ドクターストップがかかっている」なんて断るのもいいんじゃないでしょうか。
私が人材紹介を仕事に選んだのも、「人の役に立てる」というのもそうなんですが、「接待が無い、ゴルフが無い」というのもありました。
転職回数が多い人の前職を辞めた理由をどうするか
人材紹介会社は求職者の履歴書を企業に代行して送ります。そのときに、退職理由もあわせて送るんです。私からのアドバイスとしては、「出来るだけネガティブなことは言わないこと」ですね。前の職場で大変なこともあったかもしれませんが、本音を言って良いときと悪いときがあると思います。
駐在員との関係はどうですか
今の人材紹介会社には駐在員はいません。私が求職者の方から聞いたことをここでは話しましょう。
あるメーカーなんですが、そこには30人の駐在員がいて、現地採用はたった1人だったそうです。確か、通訳か総務でその方は入られたんですが、その方以外現地採用はいなかったらしく。特に何か言われたりはしなかったけれども、周りから見られているような印象を覚えたそうです。
駐在員はその方を、「タイ語がペラペラでタイに長い人」という態度で接し、タイ人も現地採用と駐在の違いが分かるので、居心地が悪かったらしいです。社内の空気、雰囲気が気になったそうでした。
あと、駐在員からの現地採用への接し方ということについて言えば、「男性は風当たりが強い」ということがあげられます。反対に、男性ばかりの職場に女性が入ると和むので、女性限定の現地採用の求人も結構あります。
男性よりも女性の方がコミュニケーションの取り方がうまいんでしょうね。メーカーでも女性セールスはいます。現地採用の女性だったら、ゴルフや接待については会社側も考慮してくれますし。
東南アジアでは女性の進出が進んでいますね。タイ人の管理職は46%が女性だと言われています。タイ人の夫婦は奥さんの方が旦那さんよりも給料が高いことがあるんですよ。タイ人男性はヒモ気質がありますが。
日本人の現地採用との関係について
タイの日本人社会は狭いですよ。私はタイに来て4年半になりますが、前までは日本人とは距離を置いて付き合うというスタンスでいました。でも、30歳になる年に、日本人とも交流を広げて行こうと考えるようになりました。
人脈を広げて行ってそれがビジネスにつながることもあります。でも、そのビジネスが失敗したときには後で気まずくなりますね。タイ人でよくあることなんですが、試用期間が終わった後に辞めてしまったケースなどがそうです。人の採用の仕事なので、距離が近い人ほどスムーズに行かないことも多いです。
ウチの会社には女性が1人います。陽気な性格でサバサバしています。ストレートにモノを言う人です。仕事の進め方も私とは違いますし、凄いなと尊敬できるところはいっぱいあります。会社なんで、「仕事の仲間、同僚」という関係ですね。
一般的に、現地採用同士だったら仲良く出来ることが多いでしょう。同じような条件、待遇ですし。「タイが好きだから、タイに来ている」ということでも共通しています。
タイ人についてはどうですか
タイで働く上でタイ人と一緒にどうやってうまく働いて行くか?というのはどこの会社でも頭を悩ませる問題みたいですね。私の場合、タイ人の紹介は社内のタイ人の力が無いと難しいと感じています。いかにタイ人に協力してもらうか?というのがテーマなのですが、、、。
一度、私が取って来た求人案件について、社内のタイ人から求人をないがしろにされたことがあったんです。そのとき、タイ人を怒ったんですが改善されませんでした。その後、「1人でやります!」と啖呵を切って、それからは日本人、タイ人両方の窓口を私が1人でこなすことになりました。
割合で言うと、日本人の求人が6割、タイ人の求人は4割ほどです。日系企業の場合ですと、総務人事担当の窓口というのは日本人が多いですね。
会社からはノルマのことを言われるので、日本人の求人だけを相手にすることは出来ません。タイ人の求人の案件もこなしていかないといけないんですよ。
会社に不満がもしあるとすれば、「社内のタイ人はノルマを達成していなくても、会社から文句を言われていないんじゃないか」ということです。社長がタイ人スタッフにかなり気をつかっていて、タイ人に舐められているのではないかとも思ってしまいます。
現地のローカルスタッフにうまく働いてもらうのは永遠の課題です。現状ではタイ人の協力をうまく得られず、私1人で頑張っている感じです。
タイ語について
実践で耳で覚えてタイ語を勉強しています。タイ語学校に通ったことはありません。『男女のタイ語』という本を買ったことはあります。今は仕事で困らない程度にはタイ語は出来ますよ。
今後について
30歳を機に、タイにいるか、別の国にいるか、それとも日本に戻るか模索中です。今いるタイ人の彼女と結婚してタイにずっといるという選択もありますが、それも自信がありません。
私は人生の節目というのを「1、3、5年」で捉えています。就職して1年目、とにかく苦しいけど頑張ってみよう。1年が過ぎた頃にまだ大変だけど、とりあえず「石の上にも三年」というじゃないか、もうちょっと頑張ろう、そんな感じでやってきました。今、その5年目に差し掛かっています。
仕事で楽しいこと
仕事を通じて色々な話が聞けるのが楽しいです。お客さんの業界も、メーカー、商社、サービス業などなど様々です。また、求職者の方の履歴書を拝見し、お話を伺うことで、その方のバックグラウンドを知って人生を見ることに楽しみを感じます。
それと、成約が決まったときはやはり嬉しいです。求職者の方を採用した企業からも、「ありがとう」と言われるときは嬉しいですよ。
求職者の方々へは、その方の人生のお手伝いをさせてもらっているので、とてもやりがいを感じています。
仕事で大変なことは?
人材が辞めてしまってお客さんからクレームが来たときは大変です。試用期間中に辞めてしまったときはもちろん、これはタイ人に多いことなんですが、「とんでもない人を紹介してくれたな」というクレームをもらうこともあります。
それは勤務態度が悪いとか、よく遅刻する、言う事を聞かないといったことです。こういうことは日本人求職者についてはあまり文句を言われたことはありません。タイ人求職者についてお叱りを受けることが多いんです。
求職者からクレームを受けることもあります。入った会社がブラック企業だったケースですね。立て続けに人材が辞めていて、何でそういう企業を紹介したんだ!というクレームを受けます。
そういうときは、求職者には謝罪して他の求人を紹介させてもらっています。ただ、「試用期間だけはいてくださいね」とお願いはしています。
試用期間さえクリアできれば、エージェントに紹介料がまるまる入るんですよ。これは人材紹介会社によっても規定が異なると思います。
うちの会社の場合、企業に紹介した人材が内定が決まって出社した時点で費用が発生します。例ですが、年収の20%とかですね。それから人材が1ヶ月以内で辞めたら満額返金です。
これからタイで働きたい人に送るメッセージ
きっかけは何でもいいと思うんですよ。「タイが好き」、「タイに旅行で来ました、タイに長く住みたいです」、「タイ人彼女がいます」などなど、皆さん色々でしょう。
タイが好きなら働いてみるべきです。仕事には合う、合わないはあります。上手く行かなくても何事も経験になりますよ。タイが駄目なら、ベトナム、インドネシアに挑戦してもいいんじゃないですか。